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CLUB METROが呼吸する。空気がダクトを通る。釘を打たれたリコーダーと拘束されたハーモニカから音が出る。空気は鳴ることで知らしめることができた。自分たちは流れているのだと。換気されているのだと。翻訳されると呼吸が楽になる。自分や自分の作品が現れるのがいまこのかたちだけではないんだと実感できる。私もうれしかった。私の体はバーカウンターだった。
こんにちは、と私はいう。「こっちより左に並んでいるやつとソフトドリンクがチケットと引き換えで、この二本のみ追加で200円頂くことになります」ドリンクを入れる。ドリンクを渡す。バーテンダーをする。後日テキストを書く。それが私の役割だった。L字型のバーカウンター、その範囲で音を聞き続けた。移動を制限されているということだった。聞こえる音が変わらない状態でいるということだった。私は固定されていた。私に聞こえる音もまたそうだった。私たちはなかよしだった。
プログラミングで制御され一定の間隔で空調のスイッチが入ると、銀色の太いダクトが一瞬動く。そうして音が到来する。あちらのリコーダーから旋律になっていく、その順番は変わらない。ダクトからダクトへと、星座が繋がるように音が重なっていく。繰り返される。バーカウンターから向かって右側、制御盤の手前にあるダクトがぐねっと動く。来る、と思う。あちらから順に光るように音が来る。繰り返される。時間を作っていく。音と時間が不可分だった。あの空間のなかでは音が鳴っている限り、時間が流れるということへの気まずさがないのだった。
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